2013年12月5日木曜日

The Counselor:悪の法則




Hola!
怖っ!



彼は順風満帆な人生を送っていた

このまま平穏に暮らしていれば、何一つ不自由なく生きて行けるはずだった
しかしながら、彼はその人生から大きく足を踏み外してしまった
果てしない富への欲望が彼を破滅へ誘うのだった

全てを悟り自らの終焉を思い知った時、
彼を地獄から救えるものは何一つなかった
彼はただ破滅の時を待つしかなかったのだ

人生と言うのは恐ろしい、一つギアを掛け違えただけで全く違う方向へ転がって行く
序盤の上手くいくときは全てが好転する順風満帆な人生から一転、
物事が破滅へと転がりだしたらもう止める術はないのだ

そんな一人の男の転落して行く様子を容赦なく、そして淡々と描く
この世に助けてくれる便利な神などいない、救いなど存在しない
本当の「悪」は何も裁かれる事なくのうのうと生きていく
そんな非情な世界の姿をスタイリッシュに映し出す

破滅への予兆は様々なメタファーとして描かれる
それはとても些細で小さいために誰もが見落としてしまうのだが、
思い返せば予兆はいくらでもあり、それに気付かなかっただけなのだ

それにしても、登場人物の死にっぷりが凄まじい!
アウトレイジもびっくりな凄惨な殺し方が満載
ブラピを殺したボリトーの死に様が芸術的なまでに美しいのだが、
本作は特にワイヤーを用いた殺しっぷりが印象的

そして麻薬カルテルの話の通じなさと底知れる恐ろしさ
DVDに書かれた「Hola!」とかもう笑ってしまうくらいの戦慄
僕らが見ている世界というのはほんの少しの所しか見えなくて、
裏路地を踏み入れると、そこは今まで生きてきた常識の通じない世界がある事を思い知る

そして、ラストシーン
この物語の黒幕が悠々と食事をとっている
「悪」というのは駆逐される事無くのうのうと生き延びて行くのだが、
彼女が悪なのではなく、悪というのは実体のないものなのだ

なぜなら、ラストシーンにはどこか不穏な空気がうごめいている
きっと彼女ですら、どこかでギアを掛け違えれば一気に転がり落ちて行くのだろう
香港で身を隠した所で本当に安全なのかは誰にも分からない

「ノーカントリー」を描いたコーマック・マッカーシーが脚本を担当
こちらも根本のテーマとして、誰にも止められない超越的な悪を描いている
そう考えるとコーエン兄弟とリドリー・スコットの作家性の違いも興味深い

とここまで書いてきたけれども、この映画ははっきり言って非常に難解
様々な人のレビューや解説を見ながら作品を噛み締めないと、
なかなかこの物語の旨みを味わう事が出来ないと思う

賛否両論分かれるのも納得の一本だけど、個人的にはそこまでのれなかったなぁ...
ただ、これを絶賛する人の気持ちも分かるし、酷評する人の気持ちも分かる
哲学的で難解なストーリーをセンセーショナルなシーンとスタイリッシュな映像で語っていく、そんな不思議な映画

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