2013年3月12日火曜日

監督失格




呆れ返る程のクズ男による
どうしようもないラブレター





世の中には撮ってはいけないものがある
そして、この作品は間違いなく、その瞬間を写している
ある人の死、そしてそれに直面する人の姿がそれだ

突然の出来事に慟哭し、感情の全てを曝け出している人の姿は
観てはいけないものを観ているような背徳感とやり切れなさが胸を締め付ける
それでも、そんなタブーを写し、そしてそれを表現として映画を作ったのならば、
監督の平野勝之自身がもっと自らの身を切らなくてはならない

結論から言えば、この作品は凄い作品だと思う
でも、僕はこの作品を好きになる事は出来ない
それは自分を美化し、己の醜い部分を曝け出す事の出来ない平野勝之という人物は、やはり監督失格なのだと思う
と言うより、個人的には人間失格とすら思ってしまう

林由美香という人物の死とそれに直面する平野勝之の再生を描くドキュメンタリー
なのだが、はっきり言ってこれは平野勝之という人物の都合のいいセルフ・ドキュメンタリーのようだ

この作品で全てを曝け出している人は林由美香の母親だった
対して、平野勝之自身は常にカメラを意識しながら自らを雄弁に語り、
本来ならば描くべき自らの不倫の決着も描かずにわざわざ腰の悪い時に自転車に乗って、
奇声上げながら一心不乱に走るだけでそれっぽい決着の仕方として終わせるのは非常に悪どい

平野勝之という人物のプライベートで知っている人なら、
この作品に描かれていない行間は読めるかも知れないけれど、
知り合いでも何でもない自分としては全てがわざとらしく映ってしまった

正直、この作品から発せられるメッセージって、
「な?俺ってかわいそうだろ?」って胡散臭い顔で迫られているようで嫌いだ
自らのドキュメンタリーを自分で撮るのであれば、少なからず自らの身を切る覚悟を持つべきだ

この作品でそこが描かれていないという事は「由美香」という作品においても
喧嘩と謝罪する場面を撮る事が出来なかったのと同じように平野勝之自身の未熟さの象徴
結局、それが出来ていない時点で彼はずっと監督失格なのだと思う

ただし、林由美香というミュ―ズの姿を生々しいまでに生き生きと描き、
これ以上ない美しさでフィルム納めている点は、この作品において評価できるところ、
彼女への愛と彼女を失ったやるせなさは凄い分かるし共感も出来るんだけど、
崖っぷちにおいても己を曝け出せていない平野勝之という監督を僕は好きになる事が出来ない
だから、この作品も好きになる事が出来ない

きっと、この作品は【平野勝之】という人物に同情が出来るかどうかがキモなのだろう
もしかしたら、僕はこの作品で林由美香という人物に惹かれ、
そして平野勝之に嫉妬しているからなのかもしれない...

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