2012年12月20日木曜日

Tinker Tailor Soldier Spy:裏切りのサーカス




余計なもの一切なし!




極限まで余計なものを徹底的にそぎ落とし、
触れるだけで切れてしまうくらいに鋭く、そしてソリッド過ぎる語り口は、
観ている者全ての一切の余談を許さない

裏切り者は誰なのか?
作品の中で常にピーンと張り詰めた緊張感が画面を支配する
スクリーンの外では何一つ見逃す事の出来ない観客の緊張感が劇場を支配する
そんな息が苦しくなるくらいに張り詰めた空気の中で、
熟成された男たちの騙し合いをじっくりと楽しむ

ティンカー、テイラー、ソルジャー、プアマン、ベガマンたちの騙し合い
結果として、もぐらを見つけ出す事は自らの過去を清算する事でもあったのだった―

イギリスの諜報部サーカスの中にいる地下深くに潜んだ"もぐら"
それを求めて、一時はクビになった男が再び、陰謀渦巻くサーカスへ潜り込んで行く
コードネームや本名、そして現在と過去が入り乱れ
しかもその中に答えのヒントが隠されている

ほのかに香る同性愛の空気の中で、最後に切ない結末を迎える"もぐら"
お互いにまるでこうなってしまう事を悟っているかのような対照的な表情の結末は
撃つ側は涙を流し、撃たれる側は血の涙を流し、哀愁を漂わせながらその幕を閉じる

ある瞬間から絡まっていた糸が突然解けるように回想シーンのパズルがはまっていく
あの時、あの瞬間、あのワンカットが次第に意味を持つようになってくる
この謎が解けて行く感じこそサスペンスの醍醐味である!

押し付けがましくない、自然で巧妙に貼られた伏線を見事に回収していく語り口が見事
その見事さは結末を知った後に見返すごとに新たな発見が出来るほど
噛み締めれば噛み締めるほど味が出てくるスルメ味

ゲイリー・オールドマンやコリン・ファースなど、渋く熟成された男たちのアンサンブル
まるで上質なコーヒーを楽しむかのように、苦みばしって香り高い芳醇な演技を存分に楽しむのだ!

0 件のコメント:

コメントを投稿