2013年4月20日土曜日

De rouille et d'os:君と歩く世界




触れ合う身体の生々しさが失われた本能を呼び覚ます



自らの調教していたシャチに足を食いちぎられてしまったシャチの調教師

仕事もなく金もない、そして行く当てもないシングルファーザー
そんな二人の偶然の出会いが凍った二人の心を溶かして行く

そんなありがちと言えばありがちなでお涙頂戴になりがちなプロットを
妙に生々しい描写とさりげないストーリーテリングで一味違った作品に仕上げている

何より、肉体的な描写が生々しい
それは触れ合う事で繋がり合うというコミュニケーションの表している
底辺で彷徨う二人を結びつけ、そして立ち直らせたのは身体と身体が触れ合う事だった

ステファニーの心境の変化は着ている服が少しづつ肌を露出して行く事で表現される
その変化のきっかけは、キスはしないという約束の身体だけの関係を結んで行く事
そこで本能や快楽が目を覚まし、やがて彼女を前向きに変えて行くというのも生々しい

方や、暴力でしか自らを表現出来ないダメ男のアリ
その彼の精神の未熟さは、全て自分主体でしか物事を考えられないこと
そのため、人と関わる事は他者への暴力であり、そして最愛の息子ですら同じであった

しかし、ラストの急展開により、彼は誰かのために自らを犠牲にする事を知る
失う事を知る事で本当に大切な何かを知る事となる

正直、一つ一つの展開が唐突過ぎて、うまく話にのる事が出来なかった
特にステファニーの心の変化が早過ぎて共感する事が出来なかった
そして、極めつけは最期のあまりに唐突な急展開
話のオチをつけるために、無理矢理差し込んだように見えてしまった

ただし、南フランスの美しい風景や繊細な光の表現など、
ジャック・オディアールの表現する素晴らしい映像美の中で展開するのは、
方や格闘技、方やSex、どちらも相手と触れ合う事で自らの傷を癒していく
そんな生々しい人間の本能的な身体と身体のぶつかり合いというのは興味深かった

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